マーケティング2.0とは?
この記事もワタシが研修講師として解説講義した内容に基づいて書いています
マーケティングの概念は時代とともに進化してきました
フィリップ・コトラーが提唱した「マーケティング1.0」では、企業が大量生産した製品を市場に提供し、それが消費者に受け入れられるという考え方が主流でした
しかし、1970年代から1980年代にかけて、消費者の意識の変化や市場環境の成熟化により、このモデルは限界を迎えました
その結果、登場したのが「マーケティング2.0」です
マーケティング2.0は、企業主導ではなく「消費者中心」の考え方にシフトした時代のマーケティングです
以下のような特徴があります。
- 消費者の多様化
- 1970年代から1980年代にかけて、消費者の価値観やライフスタイルが多様化し、一律の製品や広告では対応しきれなくなりました
- 消費者は「自分にとって価値があるか」という視点で製品を選ぶようになりました
- 競争の激化と差別化の重要性
- 市場に参入する企業が増え、競争が激化しました
- 単に製品を作るだけでは売れず、企業は競争優位性を持つための差別化戦略を取る必要がありました
- マーケット・セグメンテーションの登場
- 「万人に売れる製品」から、「特定のターゲットに刺さる製品」へと変化しました
- 企業は市場を細分化し、それぞれのセグメントに合わせたマーケティング戦略を展開するようになりました
STP戦略の確立
マーケティング2.0の代表的なフレームワークが「STP戦略」です
STPとは、以下の3つの要素で構成されます
- セグメンテーション(Segmentation)
- 市場を細分化し、異なるニーズを持つ消費者グループを特定する
- セグメンテーションの軸の例:
- 地理的要因(地域、国、都市)
- 人口統計(年齢、性別、所得、職業、教育レベル)
- 心理的要因(価値観、ライフスタイル、パーソナリティ)
- 行動的要因(購買頻度、ブランドロイヤルティ、使用目的)
- ターゲティング(Targeting)
- どのセグメントに対してアプローチするかを決定する
- 企業は最も収益性の高い、または競争優位性を発揮できる市場を狙う
- ターゲティングの種類:
- 無差別マーケティング(例:コカ・コーラ)
- 差別化マーケティング(例:トヨタ – 高級車レクサスと大衆車カローラ)
- 集中マーケティング(例:ロレックス – 高所得者層に特化)
- ポジショニング(Positioning)
- 競合との差別化を図り、消費者の心にブランドの明確なイメージを植え付ける
- ポジショニングの軸については、顧客視点や、競合との差別化、自社の強みとの一貫性などをもとに位置づけする
- 企業事例:
- ダイソン:「吸引力の強さ」という機能性に特化
- スターバックス:高級なカフェ体験
- ボルボ:安全性重視のブランド
- IKEA:「低価格×デザイン性×セルフサービス」という複数要素の組み合わせ

お客さんは誰か、誰をターゲットとするか、ついてはよく検討されることと思います
一方、実務において、それと同じくらい重要なのがポジショニングです
ワタシが転職してマーケティング責任者のポジションに就いた企業では、ポジショニングがあまり検討されていませんでした。また、それ以前の在籍会社においてもあまり検討されていませんでした。
ですが、実務面ではポジショニングはとっても重要です
想定するお客さんの頭の中に、「私たちの商品・サービスはこういう位置づけなのだ」と植え付ける必要があります
これがうまくできると、他社商品・サービスとむやみに競争しなくてすむようになります
いわば、ポジショニングは競争しない戦略ともいえます
STPと4Pの関係
マーケティング戦略を考える上で、STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)と4P(製品、価格、流通、プロモーション)は密接に関係しています
もともと、マーケティング4Pは1960年代に提唱され、企業が自社の製品を市場にどのように展開するかを整理する枠組みとして広く使われました
しかし、時代が進み、消費者の嗜好が多様化する中で、「どの市場を狙うべきか?」「どの顧客に焦点を当てるべきか?」といった戦略的な選択が重要視されるようになりました
そこで登場したのがSTPです。STPは、マーケティング2.0の時代において、ターゲット市場の明確化と差別化を強調するためのフレームワークとして確立されました
STPと4Pの関係
- STPが4Pの前提となります
- どの市場(セグメント)を選ぶのか?
- どの顧客層をターゲットにするのか?
- どういうポジショニングを取るのか?
- その後、4Pをどのように組み立てるかが決まります
- 4PはSTPを実行するための手段です
- STPで選定したターゲット市場に対し、適切な製品(Product)を提供し、
- 最適な価格(Price)を設定し、
- 効果的な販売チャネル(Place)を設計し、
- 適切なプロモーション(Promotion)を行います
BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違い
BtoB(企業間取引)とBtoC(企業と消費者の取引)は、マーケティング戦略において大きく異なります
項目 | BtoB(企業間取引) | BtoC(消費者向け取引) |
取引対象 | 企業 | 一般消費者 |
購買意思決定 | 複数の関係者が関与 | 個人が主導 |
価格設定 | カスタマイズ価格・交渉ベース | 一律価格・プロモーション価格 |
販売チャネル | 直接営業・展示会・代理店 | 小売店・ECサイト・広告 |
購買プロセス | 長期的・リレーション重視 | 短期的・感情的要素が強い |
マーケティング手法 | 専門的なコンテンツ・リードナーチャリング | 広告・SNS・ブランド戦略 |
BtoBは関係構築と合理的な購買プロセスを重視し、BtoCは感情に訴えるプロモーションが重要となる点が大きな違いです
特にBtoBマーケティングは、購買検討者(購買決定者)と使用者が異なる場合が結構あります
サービス提供者(自社)から見ると、購買検討者(購買決定者)も使用者もどちらも顧客であるといえます
購買検討者(購買決定者)に評価されないと、商品・サービスを買って(導入して)もらえませんが、エンドユーザーである使用者にも気に入って利用されないと契約が続かなくなります
なので、直接の商談相手である購買検討者(購買決定者)だけでなく、使用者の声も十分に聞く仕組みを取り入れることが大切です
サービスマーケティングの特徴
マーケティングというと、モノ(物販)についての解説が大半を占めるのですが、近年のサービス経済においては、サービスのマーケティングについての特徴をおさえておきたいものです
サービスの特徴には以下4つあります
- 無形性(形がないため、体験が重視されます)
- 同時性(生産と消費が同時に行われます)
- 変動性(提供者や状況によって品質がばらついてしまう場合がよくあります)
- 消滅性(在庫として貯められません)
また、サービスマーケティングでは、従来の4P(製品、価格、流通、プロモーション)に加えて、3つのP(People、Process、Physical Evidence)も重要で検討すべき要素とされています
- People(人)
- サービスの提供者(従業員)の質が顧客満足度に直結します
- 例:スターバックスのバリスタが提供する接客品質
- Process(プロセス)
- サービスの提供プロセスの効率性と一貫性が鍵になります
- 例:マクドナルドのオペレーションの標準化
- Physical Evidence(物的証拠)
- 顧客がサービスの品質を判断するための目に見える要素。
- 例:高級ホテルの内装や設備
まとめ
マーケティング2.0は消費者中心のアプローチが求められる時代でした
特にSTP戦略と4Pが組み合わさることで、効果的なマーケティング戦略が構築されました
また、BtoBとBtoCマーケティングの違い、サービスマーケティングの特徴を理解することで、より広範なマーケティングの実践に活かすことができます
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