スキル至上主義に対する疑問
ビジネスの世界では、長らく「スキル」が重視されています
特に採用(書類選考や面接)の場面では、職務遂行能力を測る指標としてスキルが用いられ、実務経験や資格、専門知識の有無が選考基準になります
また、業務委託で仕事を受発注する場合にもスキル重視です
ですが、本当にスキルが最も重視すべきものなのでしょうか?
これについては、ちょっと、というか、かなり疑問を持っていまして
スキルは確かに必要です
一定のスキルがないと、仕事にならないというのも事実だと思います
「担当者」はスキルが重要だと思います
経理担当、労務担当、Google広告運用担当、経営企画担当、その他〇〇担当。いずれもスキルが必要です
ですが、「担当者」ではなく、もっと大局的な仕事や、大きなことを推進しようとするなら、あるいは、バイネームで仕事を得ようとするなら、スキル? そうじゃないんでは?と思うわけです
スキルのコモディティ化
スキルというのは、「全体」から離れていって、部分へ、部分へといくものなんですね
例えば「マーケティング」の仕事を例にとると、
- Google広告運用のスキル
- SEOのスキル
- Googleアナリティクスの分析スキル
- MA(マーケティングオートメーション)ツールの運用スキル
- 市場調査のスキル
- 広告制作のスキル
- コンテンツマーケティングのスキル
- LINEマーケティングのスキル などなど
それぞれが担当者として専門性を高め仕事に当たります
ですが、こうした細分化された仕事というのは、得意な人、できる人もいっぱいいるわけで。
その他大勢の1人に埋もれやすい
さらに、スキルというのは測定しやすいものです
ゆえに、人事部門が好む評価指標となっています
採用でも測定しやすいスキルが重視されるわけです
しかし、スキルが高いから、仕事上で成果が上がる、というのは必ずしもそうでもなさそうです
現代では、スキルはどんどんコモディティ化(一般化・陳腐化)しています
例えば、プログラミングやデータ分析などの高度な技術スキルでさえ、オンラインの学習プラットフォームで誰でも学ぶことができるようになっています
AIの発展により、これまで「専門的」とされていたスキルが自動化されるケースも増えています
個々が高いスキルを持っていても、チームと協力できなければプロジェクトは進みませんし、組織(あるいは、外部の人たちとのコラボレーション)としての力が弱ければ、あまり成果が上がらなそうです
スキルでは測れない大事なもの
スキルは、部分、部分と細分化のほうにいくので、その逆は、というと、全体、統合のほうにいきます
ビジネスの世界では、何でも〇〇スキルというのが好きなようで、全体、統合のほうのスキルは、一般的に、リーダーシップスキルとか、マネジメントスキルとか、ヒューマンスキルとか言われています
ですが、それはスキルなの?と疑問に思うわけです
では、それは何なのか?というと、「人間性」とか「人間力」なんじゃないかと。
普段耳にすることがある言葉ですが、人間力って何なんでしょうね?
実は定義がありました
内閣によって設置された『人間力戦略研究会』によってどのような能力か定められています
その定義によると、人間力は「社会を構成し運営するとともに、自律した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」とのことです
抽象的ではあるので、具体的にどういう力が人間力かというと、答えは一つではないと思いますが、ワタシが思うに、
- 多様な人たちをまとめ、方向を定められる とか、
- 共感力がある、円滑な関係を築ける とか、
- 変化に対応し、新たな価値を生み出せる とか、
- 本質的な課題を見極め、解決策を導ける とか。
「この人の言うことなら」とか、「この人の力になろう」とか、「この人にお願いしよう」など周りの人の言動がそういった方向にいくなら、その人は人間力が高いと言えるかもしれません
このように考えると、担当者としての〇〇スキルというのとは、ちょっと(というか、だいぶ)違うと思えるのではないでしょうか
これらをビジネスのコンテクストに沿って、〇〇力というような言い方にすると、こんなようなことになると思います
- リーダーシップ力:異なるスキルを持つ人々をまとめ、組織として成果を出す力。
- コミュニケーション力:単に話す力ではなく、相手を理解し、信頼関係を築く力。
- 問題解決力:状況を正確に把握し、最善の方法を見つけ出す力。
- 創造力・直感力:過去のデータや常識にとらわれず、新しい価値を生み出す力。
- 胆力:困難やプレッシャーに負けない強い精神力
こういう力は、数値化が難しく、履歴書に書いても、評価しづらいものです
しかし、実際の仕事では、こういうもののほうが重要だと思うわけです
「人間力」の高め方
現在はまだスキル偏重の時代ではありますが、この先はスキル偏重は崩れていくんじゃないか、ワタシはそう思っております
なぜなら、AIと共存の時代だからですね
AIは〇〇スキルといった仕事や作業が大得意です
今後、AIがどんどんそういう仕事をやっていくわけです
AIと共存するために、ワタシたちは人工の知能(機械)ができない、苦手、できるけれど機械では味気ないので人間がやってほしいと思うこと。こういうことに取り組まないといけません
まさに人間力を発揮する仕事こそ、これから価値のある仕事です
では、人間力を高められるのか?ということについて、幸いにして、ワタシたちにはそれができます
やはり人間というのは、いろいろな経験を積み、苦労も失敗もして、判断力がついていき、
また、覚悟を決める、とか、やり抜くとか、他者に貢献すると決意するとか、そういった中で人間力は磨かれていくのではないかと思います
まとめ
スキルは確かに重要ですが、スキル偏重はいかがなものか、と思います
スキルは陳腐化しやすいものです
これからのキャリアを考えるうえで、「どんなスキルを身につけるか?」だけでなく、「どうしたら人間力を高められるか?」という視点を持つことが大事なんじゃないかと思います
「できる人」もいいですが、「できた人」、「人間ができた人」を目指すてみるのもいいんじゃないでしょうか。
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